細やかな世代描写が魅力的な作品 林民生の「糸」をご紹介

細やかな世代描写が魅力的な作品 林民生の「糸」をご紹介

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★糸を楽しむキーワード1「平成」

この作品の主人公”高橋漣”は平成元年生まれの青年で作品の中にも平成の世代を連想させる描写が散りばめられています。
「子ども食堂」や「東日本大震災」、「リーマンショック」、「フリカ系アメリカ人初の大統領オバマの就任」等です。
中でも「子ども食堂」、「東日本大震災」は登場人物と絡めて描写されており、注目すべきキーワードです。
「子ども食堂」での描写ではヒロインの”園田葵”がどのような過去を送ってきたのかという内容と絡められおり、「虐待」や「複雑な家庭問題」等、平成問題となった事象を作中で表現しています。

「東日本大震災」での描写は被災者の視点と周りの人との視点両方が描かれており、一つの事象が様々な範囲に影響を与えるということが表現されています。

他にも平成元年生まれの主人公の描写で数多く平成で巻き起こった社会問題が表現ており、その事象によって当時を生き抜いた人達が何を感じ、その事象がどのような影響を与えたのかが様々な視点から描写されています。

平成生まれの方にはとても胸に響く内容となっているのでぜひ世代や「平成」に注目してみてください。

★糸を楽しむキーワード2「対比」

続いて紹介する注目すべきキーワードは主人公とヒロインとの間で描写される「対比」です。

出会った頃まだ思春期の頃の”高橋漣”はサッカー選手になって世界中を飛び回りたいと”園田葵”に語り、複雑な家庭環境で育った”園田葵”は普通の生活が送りたいと語ります。

その後あることがきっかけになり離れる事になってしまう二人ですが、主人公は”園田葵”の別れが影響で無気力になり地元での労働に勤しむようになります。

反対に”園田葵”は複雑な家庭環境で生きてきた背景をバネに努力し、シンガポールで事業を展開するほどのビジネスマンになります。

その後にも主人公とヒロインの対比が描写された面白い展開は起こるのですが、それに関しては作品をご覧ください。

その他にも主人公以外の登場人物の間でも様々な人間関係の対比が描かれており、「対比」は注目するキーワードの一つになります。

続いて紹介する注目するキーワードは「複雑な視点」です。
この作品の特徴として主人公以外の視点が多く描写されている事が挙げられます。

★糸を楽しむキーワード3「対比」

作中で起こる大きな出来事として主人公”高橋漣”の初婚の相手である”桐野香”の死が挙げられます。
この出来事に関して主人公”高橋漣”の情緒だけでなく、”桐野香”の父である”桐野昭三”視点の描写や”高橋漣”と”桐野香”に出来た子供である”高橋結”視点から物事を捉えた描写があります。

上記で紹介した「東日本大震災」の例もそうですが、一つの事象に対して複数の人物の視点が描かれているのがこの作品の特徴であり、人物の裏にある背景によっての解釈の違いやそれによって沸き立つ感情の違いもこの作品の面白い所です。

まとめ

今回は林民生の「糸」を注目してほしいキーワードと共に紹介していきました。

時系列を追って紹介していない為、不親切な内容になっていると思いますが、今回紹介した内容と作品を照らし合わせて点と点が線になる感覚を楽しんでいただければと思います。

今回紹介したキーワードの他にも面白い点がたくさんあるので、感性を豊かにする為に手に取って頂きたい一冊です。

長々と色んな事を記載しましたがシンプルに面白い作品です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

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